狂犬病はどんな病気か、予防接種の目的と接種する時期、海外渡航時の注意をまとまています。
通常、予防接種後は行政機関への登録が必要で、ご自身で行っていただく必要があります。
しかし当院は湘南獣医師会に所属しているため、葉山町、逗子市、横須賀市、鎌倉市への登録代行が可能で、市役所・町役場に行っていただく必要はありません。
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監修者プロフィール:小原 健吾
日本小動物歯科研究会、比較歯科学研究会
狂犬病とは
1年に1回の狂犬病予防接種は、愛犬と人の健康を守るために、1950年から厚生労働省が定める狂犬病予防法により、犬を飼う人には犬の登録とともに義務付けられています。
狂犬病は1957年の猫の発症を最後に日本国内での発生はなく、日本は世界的にも珍しい「狂犬病清浄国」とされています。
人間をはじめほとんどの哺乳類に感染し、治療法がなく発症したらほぼ100%死亡します。
手塚治虫の漫画「ブラック・ジャック」でも取りあげられていますね。
また、海外渡航時には日本と渡航国の定める続きを行う必要があります。
● 狂犬病とは
狂犬病予防法により、1年に1回の予防接種は犬の飼い主の義務とされています。
国内での発生は50年以上認められていません。
人も犬も致死率はほぼ100%です。
海外渡航時には所定の手続きを行う必要があります。
狂犬病の症状
人の場合、狂犬病ウイルスに感染し発症するまでの潜伏期間は1〜2ヶ月で、初期症状は発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感といったいわゆる風邪の様な症状が認められます。
症状が進行すると神経症状(興奮、錯乱、麻痺)、水を飲むことができない(恐水症)、けいれん発作などが認められ、 最終的には昏睡状態・呼吸停止に陥りほぼ100%死亡します。
● 犬の症状
潜伏期間は20日から60日であり平均1ヶ月前後です。
概ね人と似た症状ですが、犬では狂躁(きょうそう)時と麻痺(まひ)時とに分けられます。
・狂躁(きょうそう)時
光や音などの刺激で過剰に反応したり異常に凶暴になり、動物でも物でも見境なく咬みつくようになります。
ヨダレも増加し、異常な声で鳴き、まさに狂犬病の名の通りの症状を呈します。
・麻痺(まひ)時
狂躁時ほど激しい症状は認められません。
見た目では狂犬病にかかっているのかどうかも分かりにくいこともあります。
頭部や首の筋肉が麻痺することで採食困難になり、全身の筋肉も麻痺して運動失調を呈します。
元気のない弱った状態にも見えるため、心配して近寄った時に噛まれて感染することが多いと言われます。
この両方の症状が経過の中で現れ、1週間程度でに昏睡状態・呼吸停止に陥り死亡します。
狂犬病予防接種の重要性

狂犬病清浄国である我が国でなぜ接種が必要なのかをリストアップします。
● 狂犬病予防接種の目的
・人間の命を守る
狂犬病は人間にも感染するため、予防接種は我々人間の命や社会全体を守る上で重要な対策です。
・ 愛犬の命を守る
狂犬病は人と同様に犬でも致死的な疾患であり、予防接種によって愛犬を守ることができます。
・法律による義務
多くの国や地域では、狂犬病予防接種が法律で義務付けられています。
狂犬病予防接種のタイミング
子犬を迎え入れた場合、基本的には以下のように予防接種を行います。
初めて予防接種を行う時期は、混合ワクチン接種の時期とも重なるので、獣医師との相談が必要です。
また成犬を迎え入れた場合は、最終予防接種日をご確認の上、獣医師にご相談ください。
● 狂犬病予防接種のタイミング
・初回接種
通常、生後3ヶ月以降に最初の接種を行います。市町村への登録も同時に行いましょう。
・追加接種
初回接種後、1年以内に2回目の接種を行います。
その後は、年に1回の接種を行います。
葉山町を含め多くの自治体では、前年度までに行政への登録を済ませている場合、年度毎に狂犬病予防接種票が郵送されますので予防接種の際にお持ちください。
愛犬を迎え入れたばかり、引っ越したばかり等の理由で登録がまだお済みでない方には届きませんので、ご注意ください。
狂犬病予防接種の流れ
動物病院での接種の場合、接種前の診察から行政への手続きまでの流れをご説明します。
● 診察、予防接種、登録の流れ
・獣医師の診察
予防接種前に問診・視診・触診などによる健康診断を受け、愛犬の健康状態を確認します。
・予防接種の実施
接種後の注意事項をお伝えし、獣医師が狂犬病ワクチンを注射します。
接種を証明する鑑札(金属のプレート)も当日お渡しできます。
必要であればワクチン接種証明書の発行も可能です。
・登録
予防接種後に市役所・町役場にて登録する必要があります。
当院では湘南獣医師会に所属しているため葉山町、逗子市、横須賀市、鎌倉市への登録代行が可能で、市役所・町役場に行く必要はありません。
ご費用
・狂犬病予防接種料:2950円(税別)
・登録料 新規:3000円(非課税) 現金のみ
継続: 550円(非課税) 現金のみ
海外渡航時の注意点

愛犬を海外に連れて行くには、日本の出国条件・相手国の入国条件を満たす必要があります。
日本帰国用の事前準備を行うことで、通常最長180 日かかる帰国時の係留期間を12 時間以内に短縮することができます。
係留期間とは、病気を発症しないかを確認するための期間で、検疫所の係留施設で過ごす必要があります。
今回は旅行・短期滞在の場合に必要な狂犬病関連の手続き(日本からの出国・日本への入国時)をご紹介します。
猫の場合も犬と同様の手続きが必要となります。
犬の場合はレプトスピラ症の検査・証明書交付も必要ですが、こちらは空港の検疫所で実施される出発前検査(輸出検査)での対応が可能です。
また、海外では犬以外にもコウモリ、リス、キツネ、アライグマ、ネコなど様々な動物からの感染が報告されているので、むやみに野生動物に近づかないようご注意ください。
● 旅行・短期滞在の場合に必要な手続き
日本での手続き
①ISO規格のマイクロチップを装着する(既に装着されていれば不要)。
②マイクロチップ装着後、生後91日以降に狂犬病予防接種を行う。
③それから30日以上、1年以内(またはワクチンの有効免疫期間内)に再接種。
④血液を採取し、日本が指定する検査機関で狂犬病抗体価検査を受ける。
⑤原則10日前までに輸出検査を受ける動物検疫所に連絡する。
⑥動物検疫所での輸出検査に②〜③について記載された獣医師及び検査施設発行の証明書を提出し、動物検疫所発行の輸出検疫証明書を取得する。
滞在国における手続き
⑦日本到着の40日前までに到着予定空港(または港)を管轄する動物検疫所に輸入の手続きをする。
⑧出発前に検査を受け狂犬病(犬の場合はレプトスピラ症も)にかかっていない、またはかかっている疑いがないことについての輸出国政府機関発行の健康証明書を取得する。
⑨⑧の証明書と動物検疫所発行の輸出証明を確認でき、輸入検査で問題がない場合、係留期間は12時間以内となる。
④の採血・血液の処理は病院で行い、検査の依頼・料金のお振込・検体のご郵送は飼い主様ご自身でお願いします。
(検査機関は指定のものをご紹介いたします)
採血は③の再接種と同じ日でも可能です。
検査結果は採血から2年間有効です。
渡航国によって出入国時の手続きや必要書類が異なるので、渡航国先の日本大使館等への確認を必ず行なってください。
日本入国時にワクチンの免疫期間が切れてしまったり、採血日から2年以上経ってしまう場合は、別途対応が必要です。
当院では抗体価検査のための採血や血液の処理、各書類への署名・記入が可能です。
必要な書類はあらかじめご用意いただいた上でご来院ください。
まとめ
狂犬病が存在しない日本でなぜ狂犬病予防接種や犬の登録が必要なのか、とよくご質問を受けます。
私がよくお答えするのは、「社会みんなの生活と健康を守るため」です。
● 社会みんなの生活と健康を守るため
「集団免疫」という言葉があります。
ある感染症に対する社会全体の抵抗力のことを指し、これを達成するにはワクチン接種が必要です。
ワクチンの対象が犬とされているのは、狂犬病予防法施行当時は野犬から人への感染が非常に多く認められていたためですが、多くのご家庭で家族として一緒に暮らすことが多い現代でも犬からの感染機会は多いと考えることができます。
日本は数少ない「狂犬病清浄国」ですが、裏を返せばほとんどの国では流行しています。
横浜や横須賀など大きな港から、狂犬病ウイルスを保有するネズミやなどが貨物と一緒に紛れ込んでしまったとき、「集団免疫」が獲得できていないと。。。
また狂犬病予防接種・登録が済んでいないと、ドッグラン、ホテルなどの施設利用時や咬傷事故の際などで煩わしさが伴います。
このように社会みんなの生活と健康を守るため、人の健康を管轄する厚生労働省が定めている法律が狂犬病予防法です。
日本が狂犬病清浄国となれたのは、みんなが予防接種と役所への登録を徹底した賜物と言えます。
愛犬の狂犬病予防接種についてご質問・お悩みがある方は、ぜひお気軽にご来院ください。