犬・猫共にとても多い歯周病。
この記事では前編・後編に分けて、前編をご解説いたします。
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監修者プロフィール:小原 健吾
日本小動物歯科研究会、比較歯科学研究会
歯周病とは
写真は犬の右上顎犬歯~切歯(前歯)をメインに撮った写真です。
歯茎(以下、歯肉)が全体的に赤く腫れていますね。
これが比較的軽度な歯周病の見た目です。
● 歯周病とは
歯周病は犬、猫で最も多く認められる疾患の1つで、現在では2歳までに犬の80%、猫の70%に歯周病の症状があるといわれています。
歯周病は歯肉炎と歯周炎の2つを合わせた病名で、歯茎(以下、歯肉)や歯を支える顎の骨(以下、歯槽骨)が破壊されてしまう病気です。
歯肉炎は歯肉のみに炎症が認められる病態で、適切な処置により完治できます。
歯周炎は、わかりやすく言うと、「歯肉や歯槽骨が溶けてなくなってしまう」ような病態です。
重度になると治療には抜歯が必要となり、一度破壊された組織は歯垢や歯石を除去しても再生することはない恐ろしい病気です。
日本で多く飼育されているトイ犬種ほどその傾向が強いため、病院でも歯周病の犬に出会うことはとても多いです。
歯周病の正確な病態把握や治療には全身麻酔下での検査・処置が欠かせません。
病態が重たくなるにつれてQOL(生活の質)は下がり、治療も難しくなっていきます。
また放置するとお口周り以外にも全身に悪影響をきたす病気でもあります。
そのため、早期発見・早期治療がおススメされます。
我々人間は歯や歯茎の違和感・痛み、歯が欠けたなどの症状を言葉にして表すことができ、自分で歯科医院を受診することができます。
ワンちゃん・ネコちゃんの場合は、症状を訴えることなくむしろ隠してしまうことも多いため、
ご家族様と私たち獣医師がチームとなって症状をよく視る(診る)ことが必要となります。
歯周病の症状
以下に、よく認められる症状をリストアップします。
● 歯周病の症状
口臭
歯肉の赤み、腫れ
歯肉からの出血
ご飯が食べにくそう、物を噛みにくそう
口の片方でしか噛まない
口を気にする、いじる
食欲低下
歯がグラグラしている、抜けた
くしゃみ、鼻水
目の下の腫れ、出血
歯周病の原因
食べカスや歯石が原因と思われがちですが、実は違います。
● 歯周病の原因
原因は歯垢の中にある歯周病菌です。
清潔な口の中でも、数時間で歯垢が付き始めます。
歯垢とは食べかすではなく、「細菌の塊」で、その中の細菌数は便よりも多いと言われています。
歯垢は歯磨きで落とすことができますが、そのまま放置すると3〜5日で歯石になり、通常の歯磨きでは除去できなくなります。
後編では歯周病と歯石の関係、ご自宅でのデンタルケア、歯周病を放っておくとどうなるか、をお話しいたします。
歯周病や他の口腔内疾患についての記事は、今後も定期的にUPしていきますので、そちらもご参照ください。
また、愛犬のお口の状態のご不安事や、日々のデンタルケアでのお悩みなどがございましたら、いつでもご相談ください。