JOURNAL診療記録

けいれん発作とてんかん発作

突然、愛犬や愛猫にけいれん発作が起きてしまったら、だれでも焦ってしまいます。

起きてる瞬間や落ち着いた後はどうしたらいいの?原因は?治療は?

不安や疑問は尽きないと思います。

この記事では、けいれん発作、てんかん発作について解説いたします。

小原 健吾

監修者プロフィール:小原 健吾

所属学会:日本小動物歯科研究会、比較歯科学研究会、日本エキゾチック動物学会 / 趣味:サーフィン、SUP

けいれん発作、てんかん発作とは

けいれん発作は、筋肉が異常に収縮・弛緩することによって、体が意識とは関係なく動いてしまう症状のことを指します。
脳の異常に限らず、内臓の病気、中毒、脳損傷、体温異常など、さまざまな原因が関与することがあります。
身体全身にけいれんが起こることもあれば、一部のみに起こることもあります。
けいれん発作の中で脳細胞の異常な興奮が原因となっているものをてんかん発作とよび、てんかん発作が複数回認められる病気を全部まとめててんかんといいます。
てんかん発作はけいれん発作の一例ですが、すべてのけいれん発作がてんかんによるものではないという点が重要です。

● けいれん発作の原因

・てんかん
てんかんは、犬でよく見られるけいれん発作の原因となる脳の疾患です。
脳腫瘍、脳炎、脳梗塞、脳の構造異常などが原因となっているてんかんのことを構造的てんかんと言い、中高齢以降に多くなります。
診断するには、以下に述べる他の病気を否定したうえでMRI検査を行う必要があります。
反対に、MRIを撮っても異常が見つからないこともあり、その場合特発性てんかんと診断します。
これは特に若い犬に見られることが多く、猫では少ないと言われています。

・代謝性疾患、各種臓器の機能不全
肝臓や腎臓などの臓器の病気や、内分泌疾患などが原因となることがあります。

・感染症
犬が感染症にかかることでもけいれん発作が引き起こされることがあります。
例えば、犬ジステンパーウイルスやパルボウイルスなどが原因となる場合があります。
特に子犬は免疫機能が不十分で、これらのウイルス感染症を発症しやすいので注意が必要です。

・低血糖
血糖値が異常に低くなることによって、けいれん発作を起こすことがあります。
けいれん発作を起こさないこともあり、ぐったりしたり、なんとなく元気がなくなるだけの場合もあります。
特に小型犬の子犬や糖尿病治療のためインスリンを使用している犬に多いです。

・中毒
チョコレート、タバコ、アセトアミノフェン、特定の植物、キシリトールガムなど、犬が摂取した有毒物質が原因でけいれん発作が起こることがあります。

・熱中症
初期の症状はパンティング、よだれ、活動性の低下などですが、さらに病態が重篤になるとけいれん発作が起きることがあります。

・失神について
けいれん発作と似たような症状で失神があります。
これは失神は脳が一時的に酸欠状態になることが原因で、意識が消失します。
失神中でもけいれんが同時に認められることがあることがあり、これはけいれん性失神と呼ばれます。
てんかん発作に比べて持続時間が短く頻回に起こることが多いです。
犬の場合、心臓病や不整脈、低血糖などで起こります。

てんかん発作の症状

てんかん発作は大きく分けて焦点性発作と全般発作に分けられます。
焦点性発作は脳のある一部で発作が起こり、症状も部分的で意識があるときとないときがあります。
全般発作は、発作の始まりから脳全体が一斉に発作を起こします。
通常は全身がけいれんし、意識はありません。

前の段落でご説明した感染症、低血糖、中毒、熱中症、代謝性疾患によるけいれん発作は、全般発作によく似た症状です。

● てんかん発作の症状

・焦点性発作
顔の一部が勝手にピクピク動く様子(けいれん)、口をクチャクチャする、よだれや泡を出す、耳を後ろに向ける、手足のけいれんなどの症状が出ます。
一見、変な行動や癖のような症状も起こりえます。
たとえば何もないところを見つめる、空中を噛むなどです。
人の場合、焦点性発作の症状に幻覚や幻聴もありますが、もしかしたら犬も幻覚・幻聴の結果このような行動をとっているのかもしれません。
また、このような焦点性発作は全般発作へ移行することもあります。

・全般性発作
身体全体が突然硬直し、けいれんや震えが見られます。
犬かきの様に手足をジタバタ動かすような動き(遊泳運動)も見られることがあります。
意識はなく、数秒~数分で終わるのが普通です。

*焦点性発作は全般発作よりも症状は軽く見えますが、両方とも同様に検査・治療の対象となります。

てんかん発作は突然起こりますが、てんかん発作の前にそわそわしたり不安そうになるなどの前触れや、特定の音や光などてんかん発作を引き起こすきっかけがあることもあります。
てんかん発作が落ち着いた後は、ぼーっとしたりフラフラすることが多いです。

けいれん発作の診断

実際に動物病院で遭遇する症状は、意識がなくなる全身性のけいれん発作です。
お話を伺ったり身体検査を行うことで、ある程度は病気をしぼることはできますが、それだけでは不十分です。
では実際にどのような検査で診断をつけていくのでしょうか。

● 必要な検査

・血液検査
肝臓や腎臓などの臓器の病気、内分泌疾患、栄養状態、炎症の有無などが分かります。
病気を探すためには必須の検査です。

・超音波検査
血液検査では評価できないような内臓の形態の変化を調べる検査です。
腫瘍性の病気、心臓病などの評価には必須の検査です。

・レントゲン検査
放射線を使って体内の構造を画像として撮影する検査です。
主に骨や呼吸器の病気、腫瘍性の病気、心臓病、異常なガス貯留などの評価を行うために行います。

・尿検査
泌尿器系の疾患が疑われる場合は必須の検査です。


これらの検査を行ってもけいれん発作の原因が特定できないときは、脳の異常を疑って以下の検査を行います。
当院では行えない検査なので、外部の獣医療機関をご紹介いたします。

・MRI検査
強い磁場と電波を使用して、体内の構造や異常を詳細に画像化する非侵襲的な医療検査方法です。
MRIは、X線(レントゲン)やCTスキャンとは異なり、放射線を使用しません。
主に軟部組織(筋肉、脳、神経、内臓など)の詳細な画像を得るために行われます。
獣医療では麻酔が必要になりますが、脳や脊髄の病気を診断するためには必須な検査です。

・脳脊髄液検査
脳脊髄液(CSF)を採取するための検査で、獣医療ではMRIと同時に行われることが多いです。
脳や脊髄に感染症、炎症、腫瘍などがあるかを調べることができます。

・脳電図検査
脳波検査は、脳の電気的な活動を記録する検査で、頭皮に電極を取り付けて脳の電気信号を測定します。
てんかんや発作の診断、脳の異常な電気的活動を評価するために使用されます。
必ずしも毎回行うわけではありませんが、一部の高度診療施設では行えるところもあります。

上記の検査を駆使して診断をつけていきます。
原因が脳以外の病気の場合、診断に合わせて必要な治療を行います。
特発性てんかんの場合は、抗てんかん薬を用いててんかん発作を起こりにくくします。
脳炎の場合にはステロイド剤、免疫抑制剤などを抗てんかん薬に加えて治療します。
また脳腫瘍の場合、脳圧降下剤、ステロイド剤を抗てんかん薬に加えて内科治療を行います。
外科治療は一般病院では行えない高度医療となりますが、放射線治療と一部の症例では手術が適応になることがあります。

ご自宅でけいれん発作が起きたら

脳の病気によって発生するてんかん発作は突然に起こります。
脳以外の病気による全身のけいれん発作では、けいれん以外の症状(食欲廃絶、ぐったりなど)がすでに起こっていることが多いです。
ご自宅での対処法をご紹介いたします。

● 対処法

・安全の確保
愛犬が発作を起こしている場合、周囲に危険な物がないか確認します。
犬がけがをしないように、硬いものや角のある物から離れた場所に移動させてください。

・冷静になって、愛犬を落ち着かせる
持病がなく元気な愛犬に意識のない全身性のけいれん発作が起きた場合、てんかん発作の場合が多いです。
先述の通り、てんかん発作は脳の異常な興奮によるものです。
そのため、愛犬が落ち着くようにやさしく抱っこしたり声をかけてあげてください。
抱っこの際に仰向けにすると誤嚥性肺炎のリスクが大きくなるので、お腹を下にして抱えてあげてください。

・口元に気を付ける
口の中に手を入れると無意識のうちに噛まれてしまうことがあります。

・緊急薬の投与
動物病院で点鼻薬や座薬といった頓服薬を処方されている場合もあります。
当院でもこの2タイプのお薬をお渡しすることが多いです。
座薬は点鼻薬よりも投与が難しいことがあるので、けいれん発作が治まってからでもいいので落ち着いて投薬してください。

・よく観察する
けいれんが続く時間、体のどこがどのようにけいれんを起こしているのか、などを観察して、獣医師に伝えてください。
スマホで動画を撮ると説明しやすいです。

・発作が終わった後のケア
発作が終わった後、犬は一時的に混乱したり、ふらついたりすることがあります。
静かな場所で休ませ、できるだけ安静にしておきます。
飲み物や食べ物を与える前に、少し落ち着く時間を持たせてください。

・獣医に相談する
けいれん発作の原因は様々です。
発作が初めてのものであったり、繰り返し発生している場合は、獣医師に相談して診断を受けることが重要です。

・緊急対応が必要な場合
通常1回のてんかん発作で亡くなってしまうことはありませんが、以下の場合は死に至ることもあるため、すぐに当院もしくは緊急病院にかかってください。
 群発発作:特に24時間以内に複数回のけいれん発作があるとき。
 発作重積:けいれんが5分以上続いたり、けいれん発作が止まらずに繰り返し発生する状態。

愛犬に突然けいれん発作が起きたらだれでも動揺してしまいます。
この記事を通して、少しでも皆様のお役に立てられれば幸いです。
けいれん発作の原因は多岐にわたり、治療法はそれぞれオーダーメイドで行う必要があります。
けいれん発作、てんかん発作でお困りの方は、ぜひ1度当院へご相談ください。

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