JOURNAL診療記録

ふせの意味と教え方

八木 颯希

監修者プロフィール:八木 颯希

愛玩動物看護師(国家資格)
愛玩動物飼養管理士1級、SAE公認家庭犬訓練士初級、日本ペット栄養学会ペット栄養管理士 / 趣味:バイク

ふせを教える意味

おすわりを覚えることができたら、次のステップとして『ふせ』や『お手』が思いつく方が多いのではないでしょうか。
今回は『ふせ』について勉強しましょう!
では、ふせを教える利点はご存じですか?

● 利点

ワンちゃんに「ふせ」を教えることには、いくつかの重要な意味があります。

#1. 安全性の確保
「ふせ」はワンちゃんをその場に静止させる かつ おすわりよりも動き出しにくい姿勢なので、危険な場面でとても役立ちます。
交通量の多い道路や、人、ワンちゃんが多い場所では、気持ちの昂ぶりや恐怖心などから思いがけない行動を起こすことがあります。
そんな時に「ふせ」ができると予測できない動きを防ぎやすく、事故や怪我のリスクを下げることができます。

#2. 自制心と集中力を養う
「ふせ」を教えることで、自制心を身につけることができます。
自分の欲求や衝動を抑えて飼い主さんの指示に従うことで、ワンちゃんの集中力も向上します。
このスキルは、他のコマンドや高度なしつけを教える際にも役立ちます。

#3. 精神的な安定とリラックス
「ふせ」の姿勢は、ワンちゃんにとって自然なリラックス状態を作り出す効果があります。
「ふせ」をすることで、興奮や緊張した状態から落ち着いた状態に持っていきやすくなります。
これは、ストレスの軽減や恐怖心の緩和にも役立ちます。

#4. ワンちゃんとのコミュニケーション強化
「ふせ」を教えることを通じて、ワンちゃんと飼い主さんの間のコミュニケーションが強化されます。
また、ワンちゃんが指示に従い成功体験をしたり、褒められることで飼い主さんとの信頼関係が深まると共にワンちゃん自身の自信にもつながります。

#5. 問題行動の予防と改善
「ふせ」は、興奮しやすいワンちゃんなどにとって有効な制御手段となります。
来客時や他のワンちゃんと会った時に「ふせ」をすることで、過剰な吠えやジャンプなどの問題行動を抑えやすくできます。

#6. しつけの基礎
「ふせ」は、他のしつけやコマンドを教える際の基礎動作にもなります。
「待て」や「おいで」などのトレーニングは、「ふせ」の姿勢から始めることでスムーズに進行しやすくなることがあります。
また、トリック(ゴロンやバーンなど)の練習でも、「ふせ」を起点にすることが多いです。

このように「ふせ」を教えることは、安全性の確保や行動の制御、精神的な安定、飼い主さんとの信頼関係の構築など、さまざまな面で利点があります。
また、日常生活の中で役立つだけでなく、より高度なしつけやトリックを教える際の基礎にもなります!

環境づくりとご褒美の準備

ふせを教える前に 環境づくりとご褒美の準備をしましょう!

● 環境とご褒美

#1.環境
最初にしつけを行うときは、できるだけ静かで落ち着いた慣れた場所を選びましょう。
雑音や他の動物がいるなどの刺激が多い場所だと、集中できず学習が難しくなります。
自宅の室内のような外部の刺激が少ない場所が理想的です。

#2.ご褒美
・フード
フードは、ワンちゃんが喜ぶオーソドックスなご褒美の一つです。しつけ用には小さめで、手軽に与えられるものが理想です。
トレーニング中にすぐに食べられるサイズかつカロリーが少ないおやつを選ぶことがポイントです。
フードの与えすぎによる肥満にはご注意ください。

・玩具
おもちゃを使った遊びやボールを投げることも、しつけの際のご褒美として活用できます。
フードにあまり興味がない、フードが好きすぎて興奮してしまう子などは玩具をご褒美としてもいいですね。

・声がけ
ワンちゃんは飼い主さんの声やスキンシップに敏感です。
成功したときには「いい子!」など、明るい声で褒めると効果的です。
また、フードをあげるよりも声をかける方がスピーディーにできますので、より正しい行動であることを理解してもらいやすいです。

しつけには、静かで安全な環境と効果的なご褒美が欠かせません。
しつけが進むにつれて、環境やご褒美の種類を調整し、ワンちゃんがどんな状況でも自信を持って指示に従えるように育てていくことも大切です。

「ふせ」の教え方

環境やご褒美の準備ができたら、「ふせ」を教えていきましょう!

● 教え方

1. おすわりの姿勢からスタート
まず、ワンちゃんに「おすわり」をしてもらいます。
「おすわり」ができた段階でしっかり褒めてあげましょう。
1つ1つの成功を褒めてあげることで、ワンちゃんは嬉しく感じ 次の指示を聞こうという姿勢をとってくれやすくなります。

#2.ご褒美を見せて注意を引く
ご褒美を鼻先に近づけて、注意を引きます。
犬が興味を持つように、匂いを嗅がせてください。

#3. ご褒美で伏せの姿勢に誘導する
鼻先に近づけたご褒美をゆっくりと床に向かって下げます。
ワンちゃんがそれを追いかけるように、前足を伸ばしてふせの姿勢を取るように誘導します。
ご褒美をを少しだけ前方に動かすと、前足を伸ばしやすくなります。

#4. 「ふせ」とコマンドを言う
誘導しながら、「ふせ」とコマンドを言います。
この時、語気が強くなりすぎないように気をつけましょう。
優しいいつも通りの声で言った方がワンちゃんもリラックスできます。

#5. 成功したら褒める
「ふせ」の姿勢が取れたら、すぐにご褒美をあげ「上手!」「いい子!」などの言葉をかけてあげましょう。
ご褒美だけでなく、ポジティブな声かけをすることでより正しい行動ができていると伝わりやすくなります。

#6.環境やご褒美を変えてみる
繰り返し練習をしてスムーズにできる様になったら、環境やご褒美を変えてやってみましょう。
最初は廊下や玄関、次にお散歩でよく通る場所など徐々にできる環境を増やしていくことで どこでもできる様になります。
おやつやご飯をご褒美にしている場合は、玩具で遊んでいる時に「ふせ」とコマンドをかけ できたら遊びを再開する というやり方もやってみてください。
これができるとおやつがないとしない等の行動を予防しやすくなります。

教える際は1回5~10分を1日2.3回のペースですと定着しやすく、ワンちゃん自身も飽きにくいです。
また、飼い主さん自身も楽しんで教えてあげてください。
飼い主さんが喜んでくれるとワンちゃんも嬉しいです。
できなかったことができる様になることを褒めて、飼い主さん自身も楽しんでくださいね。

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