JOURNAL診療記録

愛猫のおしっこが出ない⁉ 緊急性の高い尿道閉塞とは

皆様、愛猫さんのおしっこはスムーズに出ていますでしょうか?

猫は泌尿器疾患がとても多い動物で、その中でも膀胱炎、尿結石症、尿道閉塞などの膀胱から尿道までの病気を猫下部尿路疾患(FLUTD)と総称されることもあります。

特に秋から冬にかけて、気温が低くなるとFLUTDが増えてきます。

今回はFLUTDのなかでも緊急性の高い、つまり放置すると危険な状態になる尿道閉塞についてご説明します。

小原 健吾

監修者プロフィール:小原 健吾

所属学会:日本小動物歯科研究会、比較歯科学研究会 / 趣味:サーフィン、SUP

尿道閉塞とは?

文字通り、尿道が詰まることでおしっこが出なくなってしまう病気です。
詰まる原因となるものは膀胱内の尿結石がほとんどで、雌猫では発生することはまずなく、雄猫に特有の病気です。
陰茎の部分で尿道が細くなるため、尿結石そのものや尿道栓子(尿道炎から発生する物質)などが固まったものが詰まりやすくなります。
尿道が詰まっているのにおしっこを出そうとするため、さらにガチガチに詰まってしまい治療が困難になります。
この状態を1日以上放置すると膀胱がパンパンになり、腎臓にも負担がかかって急性腎障害に陥ったり、治療後も膀胱の機能が損なわれてしまうこともあります。
そのため、ご自宅の愛猫が尿道閉塞を起こしていそうなときは早急な検査・処置が必要になります。

尿結石ができる原因は体質や食べ物の影響が大きく関係していると言われ、再発しやすいことも特徴的です。

● よくある症状

トイレに何回も行くが、おしっこをした跡がない
 (これが一番決め手になる症状です)
トイレではないところでおしっこをしようとする
便秘の様にいきむ
陰部をよく舐める

このような症状が見られたら、必ず動物病院を受診してください。
元気がなくなったりぐったりしてきたら、急性腎障害に陥っている可能性が高く、命の危険もあります。

どんな検査をするの?

下の表にも記載してありますが、様々な検査を用いて、泌尿器系のみならず全身的な検査を行います。

● 必要な検査

・尿検査
尿結石の特定、膀胱炎の評価、細菌感染の有無などを調べます。
尿道を開通させた後に行うことが一般的です。

・超音波検査
膀胱内に溜まっている尿の確認、膀胱結石の確認、腎臓や尿管の形態評価などを行います。

・レントゲン検査
下腹部を中心に撮ることで、泌尿器系に存在する結石(腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石)を確認します。

・血液検査
腎臓の数値や電解質を中心に調べ、緊急性の有無について評価します。

どんな処置・治療をするの?

上記の検査で全身状態の把握ができたら、以下の治療から必要なものを行います。

● 処置の流れ

・詰まった尿道を開通させる
細い管を陰茎の先端から挿入し、詰まった尿道を物理的に開通させます。
痛みや恐怖などで暴れてしまう場合は鎮静薬を投与します。
尿道の開通ができないときや重篤な腎不全などを併発しているときは、尿道開通の処置を行わない場合もあります。

・膀胱穿刺
尿道の開通が困難な場合に、一時的な処置として行われます。
お腹から針を刺して膀胱内に溜まった尿を回収します。
腎不全を併発しているときや電解質異常が認められているときなどは、一時的にこの処置を行うこともあります。

・点滴治療
腎不全や電解質異常を認めるときには、これらの治療のため静脈点滴を行います。
重篤な合併症がなくスムーズに開通できた場合は、皮下点滴を行うこともあります。

・尿道カテーテルの留置
尿道を開通させられたとしても、再度詰まってしまう可能性が高そうなときや重篤な合併症があるときは、尿道にカテーテルを入れたまま入院治療を行うこともあります。

尿道閉塞は再発しやすい病気です。
この下に記載している予防法を行っていても再発してしまう場合は、救済的な手術が適応になります。

予防法は?

緊急性が高く、そのままにしておくと命にも関わる尿道閉塞ですが、予防法はあります。
猫下部尿路疾患(FLUTD)の予防法も同じです。

● 尿道閉塞の予防法

・食事療法
FLUTDを起こしにくくする、特別な療法食を食べることです。
また既にできてしまっている膀胱結石を溶かすことができる場合もあります。
ロイヤルカナンなど様々なフード会社が発売しているので、愛猫の好みに合わせて選ぶことができます。

・飲水量を増やす
たくさんお水を飲むことでおしっこをたくさん作り、膀胱を健康な状態に保つことができます。

・体重管理
FLUTDのリスク因子として肥満があげられます。
ぽっちゃりさんはダイエットが有効な予防法です。
他のいろんな病気の予防にもなります。

・トイレなどの環境の改善
トイレを複数用意したり清潔を保つことで、いつでも自由におしっこができる環境を作ってあげましょう。
おしっこが下に流れるタイプのトイレがお勧めです。
ストレスもFLUTDのリスク因子と言われています。
ストレス対策としてキャットタワーなど高いところに自由に行けたり、一人の時間を作ってあげることも重要です。

・定期的な尿検査
症状が落ち着いていても、年に4回程度は行いましょう。
特に秋から冬にかけてFLUTDが多くなるので、より頻回に行うことをお勧めします。

こうした予防法は続けることが大切です。
具体的にどうしたらいいか、もっとできることはないか、などの相談もいつでも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

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