犬のレプトスピラ症、耳にしたことはありますか?
混合ワクチンの時にお話を聞いたり、どこかで発生事例を聞いたことがあるかもしれません。
この記事で詳しく解説していきます。
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監修者プロフィール:小原 健吾
所属学会:日本小動物歯科研究会、比較歯科学研究会、日本獣医エキゾチック動物学会 / 趣味:サーフィン、SUP
犬レプトスピラ症とは

レプトスピラ症とはレプトスピラというラセンのような形をした細長い細菌による感染症です。
レプトスピラは、感染しているネズミなどのげっ歯類の尿の中に含まれます。
直接尿から感染するだけでなく、その尿に汚染された水や土壌を介して、レプトスピラを誤って口にしたり触れてしまうことで感染します。
リスクの高いエリアとして野山、川辺、湖畔、田んぼ、キャンプ場などがあげられます。
犬だけでなく人にも感染し、厚生労働省により4類感染症に指定されており、公衆衛生上でも重要な感染症です。
古くから人が感染した場合には「秋疫(あきやみ)」、「七日熱(なぬかやみ)」とも呼ばれることもあります。
● 近年の神奈川県での犬の発生事例
神奈川県獣医師会によると、2011年と2014年と2019年に1件ずつ報告されています。
また2021年には逗子海岸付近で、2024年には逗子市小坪地区と横浜市金沢区で、2025年1月には藤沢市で犬がレプトスピラ症によって亡くなっています。
当院でも2024年の春と冬に、レプトスピラ症が強く疑われる犬を治療しました。
確定診断をつけることができれば行政への報告がされるのですが、「疑い」に留まることも多く、実際の症例数はもっと多いと考えられます。
レプトスピラ症の病態・症状
感染し体内に侵入したレプトスピラは肝臓や腎臓などの臓器で増殖することで症状を引き起こします。
そのため一般的に急性肝不全、急性腎不全の症状が認められます。
潜伏期間は数日~14日です。
発症後の治療が成功しても数か月から数年もの長い期間、尿の中からレプトスピラが出てくる状態となる場合があります。
また感染しても症状を出さない犬も多いとされ、免疫力の低下などで発症することもあります。
● 症状
元気消失、食欲不振、発熱、嘔吐など、他の病気でもよく見られるような症状が認められます。
レプトスピラ症に特徴的な症状は、急性肝不全のために黄疸が出ていたり、身体に紫斑(しはん:あざのような出血の痕)ができたり、急性腎不全のためおしっこの量が多くなったり明らかに減ったりします。
死亡率が高く、特に尿が全く出なくなると予後は厳しくなります。
ちなみに、猫は屋外飼育されていても発症することはめずらしく、症状も軽いか全く示さないことが多いと考えられています。
レプトスピラ症の予防

愛犬と自然と触れ合うアクティビティを楽しむ方も、あまり遠出をしない方も、予防にはワクチンの接種が有効です。
気が付かないうちに感染していることがほとんどなので、しっかりと確実に予防しましょう。
またお散歩コースも注意してください。
野山や川などの水辺、ごみ置き場周囲などはできるだけ避けましょう。
ネズミが多そうなところや多くの犬が集まるところは要注意です。
● 犬レプトスピラ症に予防効果のあるのワクチン
・8種混合ワクチン
6種混合ワクチンにレプトスピラの2タイプを加えたもの。
・10種混合ワクチン
6種混合ワクチンにレプトスピラの4タイプを加えたもの。
・レプトスピラ単体ワクチン
レプトスピラの4タイプのみが入っているもの
当院では10種混合ワクチンをお勧めしています。
レプトスピラ症は秋に発生率が最も高くなり、前後では減少します。
そしてワクチンを接種しても免疫力がつくまで3週間程度かかるため、夏までに接種することをお勧めいたします。