動物病院に来院される理由でも、最も多い症状の一つです。
一般的な病気であり、病院に行こうか家で様子を見ようか悩まれることも多いと思います。
この記事では、考えられる原因やご自宅での対応、気を付けるべきポイントなどをご説明します。
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監修者プロフィール:小原 健吾
所属学会:日本小動物歯科研究会、比較歯科学研究会 / 趣味:サーフィン、SUP
便の状態
一言で「下痢」といっても様々な状態が含まれます。
まずは愛犬の便の状態がどうなのかを確認しましょう。
● 便の異常所見
・軟便
形は保てているが、つかめない程度の硬さの便。
・泥状便
形を保つことができず、トロトロとした便。
・水様便
水のようにシャバシャバな便。ペットシートに吸収されてしまうような状態。
・血便
血が混じった便。
消化管のどこから出血しているのかによって、さまざまな形態となります。
鮮やかな赤い血が便の表面についていれば、大腸や直腸など肛門に近いところからの出血が考えられ、
便が全体的に暗褐色や黒色であれば、胃や小腸などの上部消化管からの出血が考えられます。
・粘膜便
黄色や黄土色で、ベタベタ・プルプルとしたジェル状のものが混ざっている便。
大腸の粘膜が痛んでいるときに認められます。
・脂肪便
泥状で白~黄土色の便。
犬の場合は「膵外分泌不全症」という、脂肪を分解する消化酵素が十分作られなくなる病気のときに認められます。
ご相談や診察の際にはこれらの情報に加えて、便の回数や頻度、1回の量をお伝えいただくとスムーズです。
下痢と同時に起こる症状
下痢と同時に起こりやすい症状をご紹介します。
● 下痢と同時に起こる症状
・元気、食欲の低下
程度にもよりますが、ぐったりしていたり大好きなオヤツなども食べないならば心配です。
・悪心、嘔吐
気持ち悪くなることも多いです。
犬が気持ち悪いときは、ヨダレが増えたり、口をぺちゃぺちゃさせたり、アクビが増えたりします。
嘔吐があった場合、食事から嘔吐までの時間や、どんなものを吐いたのか、どれくらいの回数を吐いたのかもお伝えください。
・発熱
感染症や炎症が強いときには発熱も認められることが多いです。
耳や下腹部などの毛が薄いところを触れて確認してみてください。
・腹鳴(ふくめい)
腸の蠕動運動が活発になりすぎると、おなかがギュルギュルなります。
気持ち悪さや腹痛にもつながるので、認められた場合はお薬での治療をお勧めいたします。
・しぶり
便が出ない、もしくは少ししか出ていないのに、排便姿勢を何回もとったりいきんだりすることを指します。
「しぶり」を認めた際には、下痢の原因が大腸にあることが多いです。
・脱水
食欲低下のほかにも、下痢や嘔吐によって水分が喪失すると認められやすいです。
一度脱水が進むと体調もガクっと悪くなることも多いので、病院の受診をお勧めいたします。
・痩せていく、体重減少
食事が十分採れていない場合や、小腸での消化・吸収が不十分の時に認められます。
下痢が慢性化した時に多く認められ、大きな病気が隠れている可能性があるサインです。
下痢の原因
下痢の原因は多岐にわたり、その原因に応じて適切な検査や治療を行う必要があります。
● 下痢の原因
腸の疾患
・感染症
寄生虫、ウイルス、細菌による感染症です。
・炎症性疾患
いわゆる自己免疫性腸炎。自身を守るはずの免疫機能が腸を攻撃してしまう病気です。
・腫瘍性疾患
リンパ腫、腺癌など。
・構造的な疾患
腸重積、腸捻転など。
消化管以外の疾患
肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、ホルモン疾患など様々なものが考えられます。
その他
・食事性
いわゆる食当たり、食物アレルギー、食物不耐性など。
・中毒
チョコレート、ネギ類、アボガド、タバコなど、様々なものが犬に中毒を起こします。
・ストレス
長期間の強いストレスが引き金になることがあります。
・医原性
まれにお薬の影響で下痢をすることがあります。代表的なものが抗生剤です。
このように様々なものが原因として考えられます。
確定診断をつけるためには様々な検査を組み合わせる必要があります。
急を要する場合
元気や食欲がしっかりあり、下痢以外の症状が認められないときは治療数日で治ることもあります。
しかし、以下のような時には早めに確定診断をつけたり、緊急的な処置が必要な場合があります。
● 急を要する場合
・子犬の下痢
人間の赤ちゃん同様、そもそも下痢を起こしやすいです。
免疫機能が不十分なため、ウイルス感染症や寄生虫感染症に罹っているリスクも高いです。
下痢や食欲低下による脱水症状、低血糖で急激に状態が悪くなり、命に関わることもあります。
ぐったりしたり身体が冷たかったり、血便や嘔吐も認められた場合はすぐに受診してください。
・激しい血便が出た場合
重篤なウイルス感染症や全身的な疾患が隠れている可能性が考えられます。
イチゴジャムやトマトジュースのような下痢が出たら、緊急の状態である可能性が高いです。
・ぐったりしたり嘔吐が強く認められた場合
子犬でも成犬でも、早めの受診をお勧めします。
全身症状が認められている場合は銃読な疾患が潜んでいる可能性が考えられます。
・慢性経過を辿っている場合
初診日から2~3週間以上治療をしていても改善しない場合、大きな病気が潜んでいる可能性が高いです。
慢性的な消化・吸収不良により痩せてくることも多いです。
無麻酔でできる検査(血液検査、レントゲン検査、超音波検査、便検査)のほか、全身麻酔下での内視鏡検査を行い確定診断をつける必要性が強いです。
診断が得られてからも治療が長期にわたる場合もあります。
その他にもご心配事がございましたら、一緒に解決していきましょう。
ご自宅での過ごし方
愛犬が下痢を起こしたとき、どのように看病したらいいのかご説明します。
● ご自宅での過ごし方
・ご飯
はじめは半日ほど絶食をし、お腹を休ませてもいいでしょう。
食欲を確認しながら、ふやかしたご飯やおかゆなどをあげてみてください。
おかゆにはササミの湯で汁や、カツオなどの出汁を使っても大丈夫です。
量はいつもの1/4~1/3程度をいつもよりも頻回にして与えましょう。
体調を見ながら数日かけていつものご飯に戻していってください。
ご飯を変えた後に下痢をした場合は、元のご飯に戻してあげてください。
お薬を飲ませるための少量のおやつは与えても大丈夫ですが、アレルギーに注意してください。
・お散歩
できるだけ安静にしてほしいのでお散歩は最低限で。
外でしか排泄しない子は、終わったらはやめに帰るようにしてください。
・空調
クーラーや季節の変わり目でお腹を壊すこともあります。
人間が半袖ですごしてちょうどいいくらいの温度に設定してあげてください。
なるべく温度差がないようにしてあげましょう。
愛犬たちは人間の足元付近で生活しています。
足元は冷えやすいのでご注意ください。
我々人間がお腹を壊したり、風邪をひいたときをの様に過ごしてあげてください。