JOURNAL診療記録

歯周病とは 〜後編〜

犬・猫共にとても多い歯周病。

この記事では前編・後編に分けて、後編をご解説いたします。

小原 健吾

監修者プロフィール:小原 健吾

所属学会:日本小動物歯科研究会、比較歯科学研究会 / 趣味:サーフィン、SUP

歯石があると歯周病?

歯石中の細菌は死滅しているため歯石自体に病原性はありません。
歯の表面に歯石が少量つく程度であれば、付着していても問題にならない場合もあります。
では、どのような歯石のつき方が問題なのでしょうか?

● 歯石と歯周病

問題になる時は、歯と歯肉の境界を覆うように歯石が付着している時です。
歯と歯肉の間には、もともと歯肉溝という僅かな溝があります。
歯肉溝に歯垢が溜まると歯肉に炎症が起こり(歯肉炎)、溝が深くなって歯周ポケットが形成されます。
歯周ポケットを塞ぐように歯石が付着すると、ポケット内が歯周病の好む環境に変わっていき、歯周病をさらに悪化します。
歯石は一度付着すると歯磨きではもう落とすことはできません。

歯石や歯周ポケット内の歯垢を除去するには、全身麻酔下でのスケーリングなどの処置が必要です。

日々のデンタルケア

愛犬を歯周病から守るためには、日々のデンタルケアが欠かせません。
歯石が付着する前に、歯垢の段階であれば歯磨きで除去することができます。

● 日々のデンダルケア

歯周病予防のケアとして最も効果的なものが、歯ブラシを使用した歯磨きです。
歯の表面を磨くのではなく、歯肉溝の歯垢を落とすように磨くのがポイントです。
歯ブラシの角度は歯に対して45度にし、毛先が軽くしなるぐらいの軽い力で磨きましょう。
1番オススメなのは歯ブラシです。
歯ブラシは鉛筆のように持つことで、余計な力が入らずにすみます。
慣れるまでは、一度に全部の歯を磨くのではなく、数回に分けて磨くようにすると愛犬の負担も軽くなります。
導入時期はブラシ全周360度に植毛されたブラシや指サック式の歯ブラシもオススメです。
歯磨きの習慣は、1歳までの間につけておくようにしましょう。
完璧じゃなくても、毎日コツコツと続けるのがとても重要です。

歯ブラシでの歯磨きは難易度が高いです。。。
難しい時は無理をせず、シートでの歯磨きや、その他の歯磨きグッズを用いたケアでも可能です。
当院ではデンタルケアのご相談も承っております。

歯周病が進行すると。。。

歯垢が付着したまま放置すると歯周ポケットが形成され、さらに深くなっていくと歯肉は後退していきます。
すると、歯を支える顎の骨(歯槽骨)が溶けていき、歯がグラグラし、痛みが出てきたり、ひどいときには歯が抜けてしまいます。
写真の様に歯の根元が見えてしまうこともあります。
その他に起こる異変としては以下のものが挙げられます。

● 歯周病が進行すると。。。

・口臭、歯茎からの出血
口臭は一番わかりやすい歯周病のサインです。蓄積された歯石や歯垢のせいで
歯茎に炎症が起こっているサインです。
歯茎に炎症が起こると出血しやすくなります。
ご飯を食べる時に痛がったり、口周りを気にする
歯周病が重症化すると痛みが出てきます。

・くしゃみや鼻水が出て、鼻炎のような症状が出る
上顎の歯の根元で起こっている炎症や感染が、鼻の中にまでひろがっている状況です。
歯周病を起こしている細菌が原因で鼻炎が発生しています。

・頬が腫れたり、膿が出る
歯の根元の炎症・感染が頬の皮下や目の下まで広がり、重症化すると皮膚に穴が開いて膿が出てきてしまいます。
治療には抜歯が必要です。

・下顎の骨がもろくなり、骨折する
歯周病が進行すると、歯を支える歯槽骨が溶けてしまいます。
これが下顎で起こって、悪化していくと、最終的には顎の骨が折れてしまいます。
進行が緩やかなため、痛みや食べにくそうな様子が見られる時には骨折していることが多いです。

・口腔内の細菌が全身に回る歯性病巣感染(しせいびょうそうかんせん)
歯周病になると周囲の血管から血液中に歯周病菌や毒素が侵入(菌血症)し、心臓、腎臓、肺や肝臓等の全身の臓器に悪影響を与え、臓器障害・臓器不全の一因となります。
このように、歯周病が原因となり二次的な疾患が生じることを歯性病巣感染といいます。

歯周病や他の口腔内疾患についての記事は、今後も定期的にUPしていきますので、そちらもご参照ください。
また、愛犬のお口の状態のご不安事や、日々のデンタルケアでのお悩みなどがございましたら、いつでもご相談ください。

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